エコキュートは、他の給湯器と比較して大幅に給湯コストが安くなることや、お湯を沸かす際のCO2排出量が少ないなど、経済的メリットと環境負荷の少ない給湯システムとして人気になっています。さらにエコキュートは、貯湯タンクに大量のお湯を貯め置きして、そこから必要な時に給湯していくというシステムとなっているため、万一の自然災害で断水などが発生したとしても、非常用水を確保できるという面が近年注目されています。
しかし、ここで気になるのは「エコキュートのタンクに長時間置いているお湯は、そのまま飲料水として使っても問題ないのか?」ということです。そもそもエコキュートは、お風呂や洗面に必要なお湯を供給するだけでなく、キッチンなどにも給湯するシステムですので、「飲めない…」ということはないのでしょうが、メーカーの取り扱い説明書などに「そのまま飲用するのには適していない」などの注意書きがあるため、気になってしまう…という方が多いようです。
そこで今回は、災害時にエコキュートのお湯をそのまま飲んだとして、衛生面や安全性から見た場合どうなのか?ということについて考えていきたいと思います。
目次
災害時にはエコキュートのお湯をそのまま飲んでも問題ないの?
エコキュートを導入しているご家庭であれば、自然災害などで断水が生じてしまった時でも、タンク内に残っているお湯を非常用生活用水として利用できるため、非常に安心できると思います。しかし、タンクに残っているお湯を食器洗いなどに利用する場合は特に気になりませんが、お子様などがそのまま飲むと聞けば「大丈夫かな?」と不安になってしまうのではないでしょうか?
ここでは、エコキュートのタンク内に残っているお湯の安全性について簡単にご紹介しておきましょう。
エコキュートメーカーの見解について
それではまず、エコキュートの開発・販売を行っているメーカーの見解からご紹介していきましょう。エコキュートは特定のメーカー1社が作っているわけではなく、最近の人気の高さから非常に多くのメーカーが開発に参入しています。そして、そのほとんどのメーカーは「エコキュートのお湯はそのまま飲用するのには適していない」という考えに落ち着いています。これに関しては、エコキュートを購入した際に付属されている取扱説明書にも記載されているのです。
こう聞くと、エコキュートから供給されるお湯の安全性を疑ってしまいますが、実はお湯の安全性に問題があるから飲めないと判断しているわけではありません。エコキュートは、安い深夜帯の電気を使って、一日に必要になるお湯をまとめて沸かし貯湯タンクに貯めておくという運用をする方が多いです。この場合、作られたお湯は貯湯タンクにしばらく貯めておかれることになるのですが、その場合『一般的に飲用しても問題ないとされる水の基準』を外れてしまうのです。
こういった理由もあり、エコキュートのメーカーは「そのまま飲むのは適さない」と判断しているのです。要は、あくまでも安全性に自信がないという訳ではなく、法律が決めている基準にそぐわない状態になってしまうため、飲用に適していないとしているだけの話です。ちなみに日立の水道直圧給湯のエコキュートでは、エコキュートで作られるお湯を『水道水の水質をほぼそのままに給湯できる』と紹介しています。
エコキュートのお湯を飲むには?
エコキュートを開発するほとんどのメーカーは、そのままエコキュートのお湯を飲用に使用するのには適さないと判断しているのは分かりましたね。それでは、飲用に使う場合にはどうすれば良いのでしょうか?
エコキュートのメーカーの多くは、エコキュートのお湯を飲用に使用するときには『煮沸』してから飲むようにと注意書きしています。つまり、煮沸さえすれば基本的に飲用として利用することができるわけです。
ただしエコキュートのお湯を飲用に使用する場合には、いくつかの注意点が存在しています。前述のように、メーカー側は『煮沸すれば安全』と発表しているのですが、全ての家庭で言えることではないということです。
どういうことかというと、エコキュートは水道水を沸かしてお湯を作るシステムなのですが、やかんなどでお湯を沸かすのと同様に、水道水に含まれるミネラル成分(マグネシウムなど)や水垢などがタンク内に付着・沈殿してしまう可能性があるからです。つまり、エコキュートの貯湯タンクは、使用しているうちに徐々に汚れが蓄積してしまうものですので、何のメンテナンスも行っていない…という住宅の場合、煮沸したから安全…とは必ずしも言えないのです。エコキュートのお湯を飲用にも使えるようにしたいと思うのであれば、定期的にエコキュートの点検・メンテナンスを行っていかなければならないと覚えておきましょう。
ちなみに、メーカー側が『煮沸すれば安全』と言っているのは、こういったメンテナンスはきちんと行っている前提での話なのです。
災害時のためにエコキュートの貯湯タンクは定期的に清掃しましょう。
エコキュートのお湯を飲用にも使用したいと考えるのであれば、貯湯タンク内を清潔に保っていなければいけません。エコキュートの貯湯タンクは、水垢や水道水のミネラル成分など、どうしても沈殿物が溜まってしまうものなのです。したがって、以下のようなメンテナンスを定期的に行いましょう。
貯湯タンクの水抜き
エコキュートの貯湯タンクは、3ヶ月~半年に1回程度のメンテナンスが目安となります。特に貯湯タンク内は、汚れが徐々に蓄積していきますので、最低でも半年に1回は『水抜き』と呼ばれる作業を行ってください。
エコキュートの水抜きは、機種によって微妙に手順が異なりますが、一般的な作業手順は以下のようになっています。実際に作業する場合は、きちんと取扱説明書をご確認ください。
- まず漏電遮断機をOFFにする
- 給水配管専用止水栓を閉じる
- 逃がし弁レバーを開放する
- 排水栓を開いて2分以上排水する
- 水の排出が終了したら、逃し弁レバーを閉じる
- 漏電遮断機をONにする
- 最後にお湯が出るのを確認して完了
一般的な水抜き方法は、上記の流れです。ただし、エコキュートの設置から何年も水抜き作業をしていない…というご家庭であれば、既に汚れが蓄積しすぎていて、この方法ではタンク内の汚れを排出することができません。したがって、一度専門業者にタンク内の清掃をしてもらい、その後は自分で定期的なメンテナンスをするようにしましょう。
まとめ
今回は、エコキュートのお湯を飲用として利用する場合に知っておきたい基礎知識をご紹介してきました。エコキュートとは、非常に給湯コストが安い給湯器として人気となっていますが、貯湯タンクに大量のお湯を貯めておけるというシステム上、万一の自然災害時には非常用水を確保できるというメリットもあるのです。
しかし、エコキュートに長時間貯め置きされているお湯に関しては、通常の水道水とは状態が異なることから、そのまま飲むのはメーカーも推奨していません。どうしても飲用に利用したいと考えるのであれば、一度に煮沸してから飲むようにしましょう。ただし、貯湯タンクの清掃など、定期的なメンテナンスを何も行っていない…という場合には、お湯に汚れが混ざってしまう可能性もありますので注意しましょう。もちろん、この場合、お風呂に使用するお湯にも汚れが混ざってしまう可能性もありますので、お風呂のお湯も不衛生になってしまいます。エコキュートを安全に衛生的に使いたいと考えるのであれば、定期的にメンテナンスを入れることを忘れないようにしましょう。
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