近年、電気を利用してお湯を沸かす給湯システム『エコキュート』が非常に高い人気を誇っています。エコキュートが人気の理由は、「家計にかかる給湯コストを削減できる!」という点が注目されているからで、いろいろなサイトでも「安い深夜帯の電力を利用してお湯を作るシステムだから電気代が安くなる!」などと説明されています。
確かに近年では、エコキュートのような製品を利用するご家庭のため、昼間と夜間の電気料金に格差をつけた契約プランを電力会社が作っています。そのため、こういった電気契約に切り替えてエコキュートを利用すれば、給湯コストを下げることは可能です。しかし、注意が必要なのは、こういった昼間と夜間の電気料金が大幅に異なる電気料金を選択し、エコキュートなどを利用すれば、全ての人の電気代が削減できるかというとそうでもないのです。
そこで今回は、最近よく使われる表現である「安い深夜電力で電気代削減!」という言葉の罠をご紹介しておきます。
目次
そもそも全ての人の『夜間電力』が安いわけではない
最近では、「安い夜間電力を活用して電気代削減を…」などとうたっている製品が多いため、自分が契約している料金プランも「夜間の方が、電気代が安くなっているのだ」と何となく思っている方は多いことでしょう。確かに、電力会社は上述のような料金プランを作っています。
しかし、注意が必要なのは、実際の所、大多数の人は「夜間電力が安い料金プラン」の契約をしていないということです。多くのご家庭が契約している料金プランは『従量電灯』など、標準的な料金プランであり、これは単に使用量に応じて電気料金が決まるのであって、24時間いつ電気を使っても電気料金単価は同じに設定されているのです。
上述しているような、「夜間の料金単価が安く設定されている」料金プランの場合、もともと契約しているプランから移行しなければならず、今まで一度も電力会社の料金プランを変えたことが無い…という人であれば、「従量電灯」で契約している可能性が高いです。
オール電化などを導入している方であれば、「従量電灯」から変更していると思いますが、そうではない方は「昼間より夜間の方が、電気代が安い」という考えは改めた方が良いでしょう。
夜間が安いプランでも注意が必要
ここまでの説明で『安い深夜電力で電気代削減!』というメリットは、全ての人が受けられるものではないということが分かりましたね。もちろん、現在「従量電灯」の料金プランを契約している方でも、電力会社に連絡して料金プランを変更すれば夜間の電気料金を安くすることは可能です。しかし、夜間の料金単価が下がるタイプのプランにしたとしても注意しなければならない点があるのです。
昼間の電気料金に注意
エコキュートを導入するのであれば、夜間の料金単価が下がるタイプの契約に切り替えることを販売店などから勧められると思います。冒頭でご紹介したように、エコキュートは「安い深夜電力でお湯を沸かす」ため、給湯コストを削減できるという特徴があるためですね。しかし、ご家庭のライフスタイルによっては、夜安いプランに安易に変更してしまうと、かえって電気代が高くなった…なんて恐ろしい結果を招きかねないのです。 ここでわかりやすいように、関西電力が提供する『はぴeタイムR』を参考にしてみましょう。この料金プランに変更した場合の電気代は、以下のようになります。
【基本料金】 | |
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最初の10kWまで | 1契約 2,200.00円 |
10kWをこえる1kWにつき | 396.00円 |
【平日の場合(月曜日~金曜日)】 | |
7時~10時 | 22.89円 |
10時~17時 | 26.33円 |
17時~23時 | 22.89円 |
23時~7時 | 15.20円 |
【休日扱いの場合(土日祝日等)】 | |
7時~23時 | 22.89円 |
23時~7時 | 15.20円 |
(2019年10月現在)
上の表を見ていただければわかりますが、こういった料金プランの場合、夜間の電気料金単価が低い代わりに、昼間の料金単価が高く設定されているのです。そもそもこういった料金プランは、「夜間は電力需要が減少するため、料金単価に差をつけることによって、日中の需要を夜間にシフトさせよう」という電力会社の意図もあると言われています。
それでは、エコキュートなどを導入すれば、家計全体の電気料金が下がるのでしょうか?これについては、「下がる家庭もあれば、上がる家庭もある」というのが答えです。例えば、日中は学校や仕事などで家にほとんど人がいなくて電気を使わない…という家庭であれば、夜間の電気料金が下がった方が確実にお得になるでしょう。しかし、小さなお子様や高齢者のいるご家庭で、昼間の電気使用量も多いというご家庭であれば、昼間の料金単価が高くなってしまうことで、逆に電気代が上がってしまう可能性もあるのです。 エコキュートなどを導入する場合、こういった事もよく考えて電力会社との契約プランを選択しなければ、本来得するはずなのに、最大限の効果を得られない…という可能性が出てきてしまうのです。ちなみに、エコキュートが給湯コストを削減できるのは、電気料金によるものだけでなく、ヒートポンプ技術によって大気中の熱を効率よく活用しお湯を作ることができるという構造をしているからです。
まとめ
今回は、エコキュートのメリットとしてよく言われている『安い深夜帯の電気でお湯を作るから電気代が削減できる!』という宣伝文句の罠についてご紹介しました。
もちろん、本稿でご紹介したような、夜間の料金単価が大幅に安くなる契約プランに切り替えることで、電気代が削減できるご家庭は非常に多いのも確かでしょう。しかし、普段のライフスタイルを良く見返してみなければ、昼間の電気代の上昇の方が大きくて、結果的に損してしまう…という方も確実に存在するのです。
エコキュート単体だけを見ると、夜間の料金単価が安いプランの方がお得になるのでしょうが、その他の家庭で利用している電気製品や、どの時間により多くの電力を使用しているのかをよく考えておかなければいけません。ちなみに、深夜電力を最大限利用するためには、近年、災害時の停電対策設備として注目されている『家庭用蓄電池』を導入するのもオススメです。蓄電池は、その名称通り「電気を蓄えておくことができる設備」ですので、安い夜間電力を貯めておき、それを昼間に利用するなどの運用法をすれば、電気代の格差を上手に活用することができるようになります。