近年では、家計にも優しいさまざまな省エネ製品が登場しており、私たちの生活をどんどん便利にしてくれています。しかし、こういった省エネ製品は、非常に豊富な種類が販売されていますし、似たような名称がつけられることも珍しくなく、どれがどういった機能を持っているのかがイマイチ分からない…という声を耳にすることも多いです。

現在の生活に必要不可欠となる給湯関連のシステムで考えてみても、「エコキュート」や「エコジョーズ」、「エネファーム」に「エコウィル」などと、非常に良く似た名称の製品が販売されており、ご自宅に導入する場合にはどれを選択すれば良いのか…と迷ってしまうという人も多いのではないでしょうか。場合によっては、似たような名称をした製品なのだから、持っている機能も「どうせ似たような物だろう…」と、どれを購入しても一緒だと考えている人までいるかもしれません。 しかし、これらの製品は、名称は似ているかもしれませんが、実は使用するエネルギー源すら異なり、全く別物のシステムだということは覚えておかなければいけません。何も考えずに、「どうせ一緒だから」などと考えてテキトーに導入してしまったのでは、本来その製品が持つ省エネ効果も得られず、余計なコストばかりかかってしまう可能性もあるのです。そこで今回は、よく似た名称で、『同じ機能を持っている』と勘違いしている人が多そうな省エネ製品の特徴をそれぞれご紹介します。

似たような製品でもかなりの違いがある!

それではまず、似たような名称で、「同じような機能を持った省エネ製品…」と勘違いされることが多い「エコキュート」「エコジョーズ」「エネファーム」「エコウィル」の4つの製品の違いを簡単にご紹介しておきましょう。この4つの省エネ製品に関しては、それぞれの違いがイマイチ分からない…という人も多いですが、実は根本的な違いで大きく2つに分けることができます。

まず一つ目は、「エコキュート」と「エコジョーズ」が該当するもので、これらは『熱の生産や供給に関する性能を高めた給湯器システム』となります。もう一つのタイプは、『熱に加えて、電気の生産・供給も担うシステム』となっており、これらはコージェネレーションシステムなどとも呼ばれ、「エネファーム」と「エコウィル」が該当します。

まずは、これら4つの製品に関して、それぞれの特徴をまとめておきましょう。

比較項目 エネファーム エコウィル エコジョーズ エコキュート
製品概要 家庭用燃料電池コージェネレーションシステム 家庭用ガスコージェネレーションシステム 潜熱回収型ガス給湯器 家庭用ヒートポンプ式給湯器
エネルギー ガス(水素) ガス ガス 電気
発電能力 あり あり なし なし
給湯能力 あり あり あり あり
販売価格 200~300万円 80万円前後 10~25万円前後 40~90万円前後
補助金 あり あり あり あり
主なメーカー パナソニック
ENEOS
アイシン
本田技研工業
長府製作所
ノーリツ ほか
リンナイ
ノーリツ
パロマ ほか
三菱電機
コロナ
パナソニック ほか

こう見ると、似たような名称を持っている製品でも、その機構や販売価格が大きく異なるため、家庭にどの製品を導入するのか?ということは慎重に検討しなければならないとわかります。なお、エコウィルに関してはエネファームの普及もあり、2017年に製造・販売が終了しています。

それぞれの製品の特徴をおさえておきましょう!

それでは、「エコキュート」や「エコジョーズ」、「エネファーム」の特徴を簡単にご紹介しておきましょう。上述したように、エコウィルに関しては、2017年9月に、各ガス会社での新規申し込み受付が終了していますので、新規でエコウィルを導入することはできません。なお、現在エコウィルをご使用中の方は、生産自体が終了していますので、万一故障した場合には、他のエコ製品への入れ替えが必要になります。故障してから検討したのでは、生活が不便になってしまいますので、早めに他製品への入れ替えを検討しておきましょう。

エコキュートの特徴

まずは、近年家庭の給湯コストを大幅に下げてくれると人気になっているエコキュートの特徴からご紹介していきましょう。

給湯器と聞けば、ガスをエネルギー源としてお湯を沸かす『ガス給湯器』をイメージする方が多いのですが、エコキュートはガスではなく電気を利用してお湯を沸かすというのが大きな特徴となります。お湯を沸かすためにガスを利用しないため、地球温暖化の原因になっていると言われるCO2の排出量を削減することもでき、ガス給湯器からエコキュートへ入れ替えるだけで、環境負荷軽減にも貢献できるというメリットを持っています。

エコキュートが、「給湯コストを削減できる!」といわれる理由は、エアコンなどにも利用されているヒートポンプ技術を利用して、大気中の熱を効率よく利用できることや、エコキュート専用の電気料金契約を結ぶことで、大幅に光熱費削減を期待できるからです。エコキュートは、ガス給湯器などのようにお湯が必要な時に作る『瞬間式』の給湯器ではなく、一定量のお湯を作り、あらかじめ貯湯タンクに貯めておくというシステムとなっています。そのため、関西電力の『はぴeタイムR』など、深夜帯の格安の電力を利用して日中に使用するお湯を作り置きしておくという使い方ができるので、経済的な給湯を実現できるのです。オール電化などと組み合わせれば、ガス会社との契約も必要なくなり、日々の光熱費を大幅に削減することも期待できます。

他にも、エコキュートは、貯湯タンクに大量のお湯を貯めておくというシステムとなっているため、万一の自然災害で断水が発生した場合でも、非常用水を確保できるということが近年注目されています。特にエコキュートは、他の製品と比較しても貯めておける湯量が圧倒的に多いですし、タンクが魔法瓶のようになっていることから、災害時もしばらくはお湯を利用できるというのもメリットと言われます。 デメリット面は、「お湯を作り置きしておく」というコンセプト上、貯湯タンクに貯めている以上のお湯を日中に利用した場合、お湯切れしてしまい突然お湯が使えなくなる…などのリスクを抱えてしまうことや、「大気中の熱を効率よく利用する」というシステム上、気温が下がる冬場などは熱効率が下がり、相対的に光熱費が掛かってしまう可能性がある点です。また、ガス給湯器などよりも設置スペースを取るため、導入したくても導入できない場合があるのも注意しなければいけないでしょう。エコキュートを導入する場合には、家族構成やライフスタイルに合ったタンク容量を選択しなければ、使い勝手が悪くなってしまい、エコキュートの光熱費削減効果を最大限利用できなくなってしまいます。

エコジョーズの特徴

次はエコジョーズについてです。エコジョーズに関しては、従来のガス給湯器を進化させたもので、現在ガス給湯器を利用している方であれば導入しやすいのが特徴でしょう。もちろん、機能的には従来のものよりもかなり上がっており、エコジョーズは排気熱を効率的に活用できるという機構が加わっています。

給湯器としては、広く普及しているガス給湯器ですが、従来から利用されているタイプは、お湯を作る際に出る高温の熱を大気中に放出するという機構になっています。エコジョーズは、このポイントに注目し、今までは排出されていた熱を回収し、お湯を作るために有効活用するシステムに変わっているのです。そのため、従来の製品では「熱効率80%程度」だったものが、エコジョーズでは「熱効率95%程度」となり、より効率的にお湯を作り光熱費が削減できるシステムに進化しているのです。 従来製品との違いでネックとなるのは、機能が良くなっている分、製品そのものの価格が高くなっている点です。そのため、一人暮らしの方で、普段湯舟に浸かることがない…という方や、家族の人数が少ない…というご家庭であれば、現在の給湯器をエコジョーズに入れ替えしたとしても、導入時の割高のコストを回収できない可能性があると言われています。

エネファームの特徴

最後は、エネファームについてです。エネファームは、上記2つのシステムと決定的な違いを持っています。それは、給湯能力に加えて発電能力も持っているという点です。

エネファームの発電能力は、製品タイプによってかなり異なるのですが、一般的に40%程度の発電効率を持っていると言われており、高性能なものとなると50%を超えるようなものもあります。発電能力を持つ設備として有名なのは、太陽光発電設備ですが、太陽光発電の発電効率は20%程度だと言われていますので、エネファームの発電効率の良さがよくわかります。

給湯能力に関しては、発電で発生した熱を利用してお湯を作るというシステムになっており、余計なエネルギーも必要とせずに給湯できるため、非常に高い省エネ効果を持っていると言えるでしょう。また、発電には水素と酸素を利用する燃料電池を活用するので、CO2の排出量も少なく環境にも優しいシステムというのも大きな特徴です。 このようにエネファームは、非常に高性能なシステムとなっているのですが、導入には大きなネックが存在しています。それは、上述した2つの省エネ製品などと比較しても、圧倒的に導入コストがかかってしまう…です。製品価格自体が非常に高額ですので、導入を躊躇してしまう人は少なくありません。

まとめ

今回は、近年非常に高い人気を誇るさまざまな省エネ製品の特徴をご紹介しました。

本稿でご紹介したように、非常に似通った名称を持つ省エネ製品でも、詳しくみてみると根本的なコンセプトから全く異なるシステムだということがわかります。したがって、こういった製品の導入を検討した場合には、ライフスタイルや家族構成などをよく考えて、「どの製品が本当に必要なのか?」を考えておかなければ、本来得られるはずの省エネ効果を全く実感することができない…なんてことになってしまう可能性があるのです。当然、ご家庭ごとに導入する目的なども異なりますので、「〇〇が一番良い製品だ!」などということもできませんので、製品の特徴と、導入する目的をよく検討するのがオススメです!