今回は、「卒FITを迎えた…」「近々卒FITを迎えてしまう…」というご家庭に向けて、卒FIT後の上手なエコキュートの利用方法をご紹介したいと思います。太陽光発電を導入している方であれば、固定価格買取制度(FIT)により高額で発電した電気を売電できることによる売電収入は非常にありがたいことだと思います。しかし、このFITは、太陽光発電の設置後10年間と決められているため、卒FITを迎えた後のことも考えておかなければいけないのです。なぜかと言うと、FITが期間満了で終了してしまうご家庭は、売電価格が急激に下落してしまうため、今までのような電気の運用をしていたのでは損してしまう可能性が高いからです。

例えば、FIT制度初期に太陽光発電を導入していた方であれば、1kWh当たり43円程度という非常に高額な売電価格が保証されていたのですが、卒FITになってしまうと大手電力会社の平均で8円/kWh程度にまで売電価格が下落してしまうのです。この売電価格は、電力会社から電気を購入する価格よりも圧倒的に安く設定されていますので、今までのような売電収入を目的とした運用は難しくなってしまうのです。

このような状況の中、近年では「卒FITを迎えた家庭なら、エコキュートの昼間運転が光熱費削減につながる!」と大注目となっています。エコキュートは、深夜の安い電気でお湯を沸かすため、家庭の給湯コストを削減できると人気のシステムなのですが、これを昼間運転させた方が省エネにつながるというのです。俄かには信じがたい情報かもしれませんので、今回は卒FIT後にエコキュートの昼間運転をさせるとなぜお得になるのかをご紹介します。

そもそもエコキュートってどんな給湯器?

それでは本題に入る前に、エコキュートがどのような給湯システムなのか?という基礎知識から簡単にご紹介しておきましょう。

エコキュートは、エアコンなどにも利用されているヒートポンプ技術を利用してお湯を作る給湯器です。もう少し詳しくその仕組みをご紹介すると、室外機を利用して大気中の熱を集め、圧縮機に運びます。そして、それを電気エネルギーによってCO2を圧縮し高温にするのです。高温になったCO2は、熱交換器に運ばれ貯湯タンク内の水を温め、水が温まったところでCO2を空気交換機に戻すという工程を繰り返して、家庭で使用するお湯を沸かす機構となっています。

同じ電気でお湯を沸かす給湯器には、電気温水器もあるのですが、エコキュートはヒートポンプ技術を採用しているため、少ない電気でお湯を沸かすことができる省エネ設備として人気なのです。

夜間電力を利用するからよりコストが安い

エコキュートのもう一つの特徴として、ヒートポンプユニットと貯湯タンクを設置する比較的大きな設備となるということです。この特徴により、設置にはそれなりに広いスペースが必要になるのですが、「お湯を作り置きできる」というメリットが得られるのです。

最近では、電力会社が提供する料金プランには、夜間の電気代が大幅に安く設定されているようなものが登場しており、これを上手に使うことで家計にかかる給湯コストを削減できるようになるわけです。どういうことかというと、エコキュートは、電気代が安い深夜帯に1日に必要になるお湯をまとめて作って、貯湯タンクに貯めておくという運用方法が可能になるわけです。

つまり、エコキュートという給湯設備は、ヒートポンプ技術を使って少ない電気でお湯を作ることができる上に、電気代が安い時間にまとめてお湯を沸かすことができるようになるため、他の給湯設備と比較して、ランニングコストが非常に安くできるのです。

実際に、同じ電気を利用する電気温水器と比較すると、概ね1/3程度の電気代で運用することが可能と言われています。

卒FIT後にエコキュートの昼間運転がお得と言われる理由は?

それでは、卒FITを迎えたご家庭で、エコキュートを昼間に運転させる方がお得だと言われる理由についてご紹介していきましょう。

上述したように、エコキュートは「ヒートポンプ技術を採用している」「貯め置きできるので安い夜間電力を利用できる」ということが、給湯コストを下げる大きな要因と言われています。そう考えるとエコキュートの昼間運転がお得になるなんて聞いても、「とても信じられない…」というのが皆さんの意見ではないでしょうか?

しかし、卒FITを迎えたご家庭であれば、今まで売電に回していた余剰電力をエコキュートに利用することができるようになりますので、『太陽光+エコキュート』という体制で、大幅な光熱費削減効果が期待できるのです。以下でその理由を見ていきましょう。

理由① 余剰電力の有効活用

近年では、太陽光発電設備を導入しているご家庭は非常に多いです。太陽光発電設備とは、その名称から分かるように、太陽光エネルギーを電力に変換する設備で、家庭で消費する電力を自家発電することで大幅に電気代を削減できる設備として人気です。

しかし、太陽光発電設備を導入しているご家庭のほとんどは、発電した電力全てを自分で消費することはできません。そこで、太陽光発電で発電した電気のうち、家庭で消費しなかった電力を余剰電力として売電し、収入を得るというのが一般的な運用方法となっています。特にFIT期間中は、売電価格も高いため、昼間の電力を自家発電で賄える上に、さらに高額な売電収入を得られるというのが太陽光発電最大のメリットなのです。

しかし、FITが期間満了で卒FITになってしまうと、売電価格が急落してしまうことになりますので、今までのような売電収入を得ることができなくなってしまいます。それどころか、卒FIT後の売電価格は、電力会社から買電する価格よりも圧倒的に安く設定されてしまっているため、いくら余剰電力だとは言え、太陽光発電で得られるメリットの一つが無くなってしまうとも言えるのです。

したがって、卒FITを迎えたご家庭では、今まで売電収入を得るために使っていた余剰電力を、自家消費に回すという運用方法に変えた方がお得だと言われています。例えば、余剰電力でエコキュートのお湯を沸かせば、売電収入は得られなくなるものの、お湯を沸かすために買電していた電力が必要なくなりますので、売電価格の安さを考えると、自家消費の方が圧倒的にお得になるのです。

理由② 夜間電力よりも売電価格は安い

理由①にも関連しますが、卒FITを迎えたご家庭の売電価格は、エコキュートやオール電化のために作られている夜間が安くなる電力プランの夜間電気料金よりも安くなってしまいます。例えば、まじめデンキがある関西圏であれば、関西電力が提供している『はぴeタイムR』というプランがあるのですが、この契約プランにした場合の夜間電気料金は14.93円です。昼間は25.86円ですので、夜間の電気代が格安だということは間違いないでしょう。しかし、卒FIT後の売電価格が8円程度まで下落することを考えると、格安の深夜電気ですら倍近く高くなるのです。

つまり、「格安の電力でお湯を作るから給湯コストを下げられる」と言われても、売電価格よりもかなり高い電力を利用するのであれば、太陽光発電の余剰電力を利用してエコキュートを昼間運転したほうがよほどお得なのです。さらに、こうすることで、電力会社の深夜プランを使う必要もなくなります。深夜電力プランを採用した場合、昼間の電気代が割高になってしまいますので、エコキュートを深夜に運転させないようにするのであれば、特に利用する必要もないのです。したがって、契約プランの見直しで、家庭全体の電気代を削減できる可能性もあるのです。

理由③ エネルギーロスが少なくなる

エコキュートを通常利用する場合には、安い夜間電力を利用して、日中に使うお湯をまとめて沸かして貯め置きしておくことになります。したがって、長時間お湯を貯湯タンクに貯めておくという運用方法が一般的なのです。

しかし貯湯タンクは、魔法瓶のような構造になっているものと言えばわかりやすいのですが、一定の保温効果はあるものの徐々にお湯の熱エネルギーは逃げて温度低下を招いてしまうものなのです。一般的な家庭であれば、お湯を最も使うのは夕方から夜にかけてとなりますが、実際に使用するまでには貯湯タンク内の熱湯の温度がある程度下がってしまうという訳です。

つまり、『深夜にお湯を沸かす』と『昼間にお湯を沸かす』という運用方法の違いを考えてみれば、昼間にお湯を沸かして、数時間後にそのお湯を利用するとした方が、圧倒的にエネルギーロスが少なくなるのです。また、エコキュートはヒートポンプを使って大気中の熱でお湯を沸かすというシステム上、気温の高い昼間の方が効率よくお湯を沸かすことができるようになるのです。実際に、エコキュートの昼間運転と夜間運転を比較した場合、昼間運転の方が平均で11%程度省エネ効果が高くなるという実験もあるのです。

まとめ

今回は、卒FITを迎えたご家庭で、エコキュートの昼間運転に切り替えることで、省エネになる理由をご紹介してきました。

FITは、再生可能エネルギーの普及推進を目指して作られた制度で、これにより太陽光発電が爆発的に普及したのは事実です。しかし、この制度は、10年間という決められた期間だけ高値での売電価格を保証しているものですので、いずれ売電価格は下落してしまうものなのです。つまり、FITによる余剰電力の売電収入を得ているご家庭であれば、卒FITを迎えた後には、余剰電力をどのように運用するのかを早めに決めておく必要があるのです。

大手電力会社などでは、平均で8円程度の売電価格になるなど、今までのような売電収入は期待できませんので、「どうやって自家消費するのか?」という視点を持っておくと良いのではないでしょうか。