今回は、エコキュートの騒音問題について簡単にご紹介していきたいと思います。省エネや自然災害への備えとして非常に有効な設備といわれ、近年設置されることが増加しているエコキュートですが、実はエコキュートの設置後に近隣との騒音トラブルが発生している…ということはあまり知られていません。

エコキュートとは、家計にかかる給湯コストを大幅に下げてくれることや、CO2排出量が少ないため環境に優しいなど、メリット面にばかり注目が集まっています。しかし、エコキュートが急速に普及する一方で、エコキュートが持つデメリット面については無視されてしまう傾向にあり、導入後に近隣とのトラブルになってしまった…という方も存在するのです。エコキュートは、エアコンなどにも利用されているヒートポンプ技術を用いてお湯を沸かすシステムなのですが、実は稼働するときに多少の駆動音や振動が発生するのです。もちろん、家庭で使用されることが想定された設備ですので、発生する音はそこまで大きくはないのですが、周囲が寝静まった深夜に稼働する給湯システムとなってしまうため、小さな音でも気になってしまう人が一定数いるのです。

実際に、エコキュートの騒音によって起訴問題にまで発展したケースもあり、「自宅にエコキュートを…」と考えている人は、エコキュートによる騒音問題を頭に入れておかなければいけません。そこで今回は、エコキュートを導入することで、近隣トラブルになってしまう原因やその対策についてご紹介します。

エコキュートの騒音トラブルの原因は?

それでは、エコキュートの騒音トラブルの原因について考えてみましょう。「エコキュートによる騒音トラブル…」と聞くと、どれほど稼働に大きな音が鳴るんだろう…と思うかもしれませんが、エコキュートが稼働するときの音は『40dB程度』と言われており、本来なら騒音トラブルになるような音の大きさではありません。実際に、この音量は、昼間の静かな住宅地の騒音値程度で、機器が出す音としてはいたって普通程度の大きさなのです。さらに、エアコンの室外機は、『50~60dB』程度の音が出ると言われていますので、本来、エコキュートの騒音量が問題になるようなことはほとんどないと思います。

エコキュートの騒音問題はヒートポンプユニットが原因

それでは、そこまで大きな音を出さないエコキュートの導入で、なぜ近隣トラブルが発生するのでしょうか?実は、エコキュートによる騒音トラブルは、音そのものの大きさではなく、低周波音を発するということが原因と言われています。

そもそも、エコキュートから出る騒音は、本体ではなくヒートポンプユニットが発しており、稼働時には12.5Hz程度の低周波音を出しているのです。通常、この程度の音は人間の耳に聞こえるようなことはないのですが、耳に聞こえないだけで体内がその周波音に反応してしまうことがあるのです。そのため、それを感じてしまう人が近くに住んでいた場合、騒音トラブルとなってしまうのです。 実際に、2014年に発表された環境省のデータでは、エコキュートなどが原因と考えられる低周波音の苦情件数は、年間で59件もあったとされ、とても「気のせい」だとは言えないのが実情です。

低周波ってなんだ?

ここまでの説明で、「エコキュートの騒音トラブルは、低周波音が原因」ということがわかりました。

低周波音がイマイチイメージできない…という人は、冷蔵庫の音や車のアイドリングの音を思い浮かべていただければわかりやすいと思います。こういった音は、普段は全く気にならなくても、部屋が静まり返った深夜などには気になってしまい、うるさく感じる時もあるのではないでしょうか?エコキュートが発する音も同様で、通常は気にならない人が多いのですが、気になり始めた人は「うるさくて眠れない…」と感じてしまうことがあるのです。

つまり、エコキュートの騒音トラブルで非常に難しいのが、多くの人は何も感じないという点です。低周波音は、周波数100 Hz以下の音を指しており、通常は人の聴覚では感知できないような場合でも、振動として感知してしまう場合があるのです。そのため、何の影響も受けない人が多い一方で、低周波音によって体調を崩してしまうような人も出てしまうのです。

こういった個人差があることから、稀に近隣との騒音トラブルにまで発展してしまうのです。現状日本では、低周波音の基準値が作られておらず、「一般被験者の90%の人が寝室で許容できるレベル」というのを参照値としています。これは、一定数の人が「うるさい…」といっても90%以上の人が「問題ない」と感じるのであれば、許容されるということです。

しかし、いくら国の基準で許容されるとはいっても、隣人から「騒音に何らかの対策をしてほしい…」という要望があれば、それを無視するわけにはいかないでしょう。

エコキュートの騒音対策はどうすれば良い?

それではここからは、近隣住民に配慮しながらエコキュートを導入するため、エコキュートの導入時に行っておきたい騒音対策についてご紹介しておきます。

エコキュートの設置場所を考える

近隣住民に配慮してエコキュートの導入を行う場合、騒音を考慮してヒートポンプユニットの設置場所を選定するというのが重要です。エコキュートの導入を行う場合、寝室の近くにヒートポンプユニットを設置しないというのが大切です。これは、近隣住宅はもちろん、ご家族の寝室の位置にも配慮しておきましょう。

エコキュートの設置を行う場合、基本的に寝室よりも15m以上開けるようにして、ヒートポンプユニットの前に塀が作れるなら音源よりも1m以上高くしておきましょう。隣家の寝室の位置については、設置前に近隣の家に間取りについて相談しに行くのも良いでしょう。

防音・防振対策を行う

エコキュートの騒音トラブルを防ぐためには、エコキュートが稼働することにより発生する揺れを抑えるということが有効です。例えば、ヒートポンプユニットが、コンクリートに直置きになっているような場合には、振動による音がどうしても発生してしまいます。

したがって、エコキュートの設置を行う際に、防音シートや防振ゴムを活用して、機器から発生する揺れを最小限におさえるという対策がオススメです。ちなみにこの手法は、既存のエコキュートの騒音対策としても行えますので、「隣家に迷惑をかけてないか…?」と不安な方は、対策しておくのがオススメです。

なお、隣家との間に音を遮るものが何もない場合には、防音用に塀を建てるのも有効です。

まとめ

今回は、エコキュートの騒音についてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、エコキュートは、お湯を作るために稼働した場合、多少の騒音を発生させてしまいます。もちろん、「うるさくて仕方ない…」というほどの大きな音を発生させるわけではないのですが、振動を伴う低周波音を発するという特徴があるため、小さな音でも騒音トラブルに発展してしまう危険があると覚えておきましょう。

したがって、近隣住宅との距離が近い…といった場合には、エコキュートの設置業者とあらかじめ相談し、騒音・防振対策をしっかりと行っておくのがオススメです。どれだけ念入りに対策を行ったとしても、「一切音を出さなくなる」という訳ではありませんが、近隣住人にきちんと配慮しているという姿勢を見せるだけでも、心情的に音が気にならなくなる…という人もいるのです。