近年では、生活に必要なエネルギー全てを『電気』で賄うことができる『オール電化』住宅の人気が高くなっています。オール電化住宅は、新しく家を建てようと考えている方はもちろん、もともと電気とガスを併用して生活している方が一大フォームを行いオール電化にするということも増加していると言われています。

それでは、今までガスも使用していた方が、多額のお金をかけてまでオール電化を導入するのはなぜなのでしょうか?この記事を読んでいただいている方の中にも、「オール電化がはやっていると聞くけど、どんなメリットがあるのだろう?」と疑問に思っている方は少なくないと思います。

そこで今回は、オール電化を導入することで得られるメリットやデメリットについてご紹介していきたいと思います。

オール電化住宅の基礎知識

それではまず、オール電化住宅がどのようなものなのか?という基礎知識からご紹介しましょう。

オール電化住宅は、名称からイメージできるように、調理・空調・給湯など、住宅で必要になる熱源について、全て電気をエネルギー源とした住宅のことを指しています。一般的には、給湯にはガスや灯油などを利用する…などと、複数のエネルギーを使用する住宅が多いのですが、オール電化住宅はそれらを電気にまとめることができるため、他のエネルギーの基本料金などが削減できるほか省エネ効果も高いことから、5~7年程度で導入費用のもとが取れると言われています。

オール電化で用いられる住宅設備

オール電化住宅にリフォームする場合に用いられる設備は以下のようなものがあります。

  • IHクッキングヒーター
    ガスコンロを電気で稼働するIHクッキングヒーターに入れ替えします。IHクッキングヒーターは、火を使わない調理器具となりますので、安全性の高さも評価されています。
  • エコキュートや電気温水器
    ガス給湯器や石油給湯器を利用している方は、電気でお湯を沸かすことができるエコキュートなどに入れ替えします。エコキュートなどは、貯湯タンクが一体となった給湯器で、一日に使用するお湯をまとめて作り置きするという使い方になります。基本的に、オール電化用の料金プランに変更して、割安な深夜電力を利用してお湯を沸かすため、給湯コストを削減することが可能です。
  • 温水式電気床暖房や蓄熱暖房機
    床暖房に関しても、エコキュートを利用した温水式電気床暖房を導入するなど、電気を利用する暖房機に入れ替えることになります。

オール電化のメリット

それでは、複数のエネルギーを併用するのではなく、電気に統一するオール電化のメリットを考えてみましょう。

ここでは、一般的に「オール電化のメリット」と言われているポイントをいくつかご紹介しておきます。

光熱費削減が期待できる

オール電化住宅は、全て電気でまかなう訳だから、ガス代などがなくなっても電気代がかなりかかって総額はそんなに変わらないのでは…と考えている人も多いでしょう。

しかし、総務省統計局の調査結果などを参考にしてみたところ、電気やガス、灯油などを併用しているご家庭と、電気のみに統一したオール電化住宅では、平均で年間4万円程度光熱費を安くできるという結果になるのです。

ちなみに、オール電化は、光熱費が電気に一本化されますので、管理が楽になるというメリットもあるでしょう。

深夜電力プランを活用できる

オール電化住宅の増加に伴って、各電力会社ではオール電化住宅用の料金プランを出しています。これらの料金プランは、深夜帯の電気料金が格安に設定されており、エコキュートなどを使用する場合には、大幅に給湯コストを削減できるメリットがあるのです。

火災リスクが少ない

オール電化住宅は、調理もIHクッキングヒーターを利用するなど、生活上で『火』を使う機会が少なくなります。そのため、住宅火災を発生させてしまうリスクを低減することができます。

なお、火災保険の中には『オール電化割引』などの制度も登場しています。

ガス漏れなどによる事故の心配がない

ガスコンロなどを利用している場合、配管の亀裂によるガス漏れや、コンロの不完全燃焼などにより一酸化炭素中毒などの事故リスクが存在します。

しかしオール電化住宅は、ガスを利用しませんので、こういった事故の心配がなくなります。

災害時の復旧が早い

災害による停電が発生してしまうと、オール電化は何もできなくなってしまう…ということが不安視されます。しかし、大規模災害時には、ガスや水道、電気などの全てのライフラインがストップしてしまうことも珍しくありません。

このような状況になった場合、実は電気の復旧スピードが最も速いため、通常の生活を取り戻すのはオール電化の方が早くなると言われています。

エコキュートは非常用水を確保できる

オール電化ではエコキュートなどの給湯器を使用することになるのですが、これらの給湯器は貯湯タンクにお湯を貯めておくというシステムになっています。

つまり、災害が発生し、水道がストップしてしまったとしても、貯湯タンクに非常用水を確保しておくことができるという訳です。

太陽光発電との相性が良い

これは言わずもがなですね。太陽光発電を導入しているご家庭であれば、昼間の生活に必要になる電気を全て自家発電することができますので、大幅に光熱費を削減することが可能です。

ちなみに家庭用蓄電池も導入していれば、昼間の余剰電力と蓄電池に溜めておき、それを夜間に利用するというサイクルが作れるため、生活に必要なエネルギー全てを自給自足することも可能になります。

オール電化のデメリット

オール電化住宅には、上記のようなさまざまなメリットが存在します。しかしその一方で、いくつかのデメリットも指摘されていますので、以下でご紹介しておきましょう。

  • 家庭の生活スタイルによっては光熱費が高くなってしまうかも…
    オール電化住宅用の料金プランを選択した場合、深夜帯の電気代が格安になるため、エコキュートを利用することで大幅に給湯コストを削減することが可能です。しかし、日中の電気代に関しては割高に設定されますので、日中も電気を多く使う…という家庭であれば、光熱費が高くなってしまう可能性があります。
  • オール電化工事以外にも費用がかかる…
    オール電化を導入する場合には、さまざまな設備を導入するための費用がかかります。しかし、もともとガスコンロを利用していた家庭であれば、IHに対応するために全ての調理器具を買い換えなければいけない可能性があるなど、工事以外にもコストがかかってしまいます。
  • 停電時は全ての設備が利用できない…
    オール電化最大のデメリットは停電が発生してしまうと、全ての設備が利用できなくなる…ということです。確かに電気の復旧は他のライフラインよりも早いのですが、それでも一定期間は何も使えなくなってしまいます。太陽光発電を導入していて、自家発電が可能なご家庭であれば、この部分は心配ないでしょう。
  • ガスに戻すのが大変…
    何らかの理由があり、オール電化からガスに戻すことを考えた場合、ガス管の工事が必要になります。特に、新築でオール電化を導入したご家庭が、ガスコンロに変えたい…と考えた場合、もともとガス管が通っていないため、大規模なガス工事が必要になる可能性が高いです。

まとめ

今回は、近年人気となっているオール電化住宅の基礎知識についてご紹介してきました。オール電化住宅は、日々の光熱費を削減できる可能性が高いことや、火災などの住宅事故リスクが少ないという安全性の高さで人気となっています。

しかし、上述したように、さまざまなメリットがある一方でいくつかの注意点も存在していますので、メリットとデメリットのバランスを良く考慮して導入するか決める必要があるでしょう。